クリマイ世莉が解説!クリミナルマインド10第3話「千の太陽」。
旅客機の墜落事故が発生!
え、事故じゃなくて事件?
誰がどこで何の目的で??
つらい過去がフラッシュバックする中、事件解明に必死になるケイトにエールを送りたくなる今回のエピソード!
クリミナル・マインドシーズン10第3話「千の太陽(A Thousand Suns)」のあらすじと感想です。
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トランス航空420便がコロラド州デュランゴの北西付近に墜落。
連絡を受けたBAUメンバーたちは現場に急行する。
目撃者の証言によると、飛行機が墜落する前に閃光を目撃しており、事件性の可能性が捨てきれず、ホッチナーたちは捜査に加わることになったのだ。
飛行機はピッツバーグを出発し、フェニックスに到着予定だった。
乗客乗員152名の生存はほぼ絶望的と見られたが、副操縦士のフランク・キャンバース(Frank Canvers)の生存が確認された。
現場を捜索するメンバーたちは、飛行機が墜落する13分前に地上と交信が途絶え、10分前には通信システムが遮断されていたことを発見する。
さらにリードとケイトは飛行機のコックピット部分を発見、乗客が残したとみられる吐瀉物も見つかった。
飛行機の墜落を目撃したという、ガレン・ペトスキー(Galen Petosky)から事情を聞くホッチナーとリアドン指揮官。
ペトスキーは、墜落した時間をはっきりと覚えており、さらに誰が犯人か犯人か知っている、だが言わない、と口を閉ざしてしまう。
キャンバー副操縦士が入院する病院を訪れたJJとモーガン。
JJの質問に対してフランクは、「激しく揺れた」「やめろ」などと混乱した様子で当時の状況をはっきりと知ることはできなかった。
激しい揺れは乱気流の可能性があるが、墜落当時の天候は良好。
モーガンは、ミサイルか何かが飛行機に当たったのではないかと、推測する。
機内にハイジャッカーが搭乗して地上で仲間がMANPAD(マンパッド)撃った可能性が出てきた。
BAUとともに捜査にあたっているチャーリー・ホッスウェル(Charlie Hosswell)は、乗客の吐瀉物から、飛行機が飛行途中で主翼から小翼が出て速度が落ちたのではないかと分析。
めったに起きることではないが、可能性は捨てきれないと言う。
地上からミサイルで撃墜された可能性をふまえ、周辺の住民について調べを進めていたガルシアは、元陸軍のミサイルオペレーターで、2年前に不当に解雇されたデヴィッド・マーシャク(David Marshak)に注目する。
デヴィッドは古いロシア製のミサイルを所持していたが、地上から飛行機を撃墜するには程遠いものだった。
飛行機の機体の構造から墜落原因を調べていたリードは、「飛行機は撃墜されたのではなく、何かによって急降下し、発生した負の重力によってバラバラになったのでは」と指摘する。
フランクにはうつ病を発症した過去があり、フルオキセチン(抗鬱剤)を処方されていたことがわかるが、フランクの妻は夫はうつ病だったが今は問題ない、と主張。
しかし、抗鬱剤の服用をやめていたことに疑問が残る。
さらに墜落する前に、フランクと機長が言い争いをしてたことがわかり、ACARSを遮断したのはフランクではないかとの見方が強まる。
ブラックボックスが発見された。
そこにはフランクと機長の会話が残っており、ホッチナーたちが予想していたのとは全く違った状況が浮かび上がる。
飛行機が操縦不可能になり、必死に飛行機を持ち直そうと試みる2人の会話だったのだ。
自ら自動操縦装置を解除することもできずシステムのリセットをすることもできない。
交信が途絶えた最後の10分間の間に何者かが飛行機をハッキングしてコントロールしていた。
そして、ホッチナーたちは今回の飛行機墜落をシリアルキラーが起こしていた事件と断定する。
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飛行機事故を取り扱う壮大なエピソードでしたね!
飛行機事故を再現してましたが、セットが大規模!
「ストームチェイサー」の時よりも、圧倒されてしまいました。
あのエピソードでもハリケーンの後を再現していましたよね。
目撃者や副操縦士がちょっと怪しいかな、という要素をいろいろと散りばめていたり、テロリストかも、という余韻を残したり、武装集団の描写を入れたりして、犯人にたどり着くまでがまるで迷路のようでしたね。
真犯人がわかるまでみんな疑ってしまって、なかなかスリルがありました^^;
飛行機の専門用語が出てきたり、特殊なミサイルの名前が出てきたりトドメはオッペンハイマー!
どれもこれもちょっと馴染みがなかったので、難解な部分もありましたが、サスペンスドラマとしてはたくさん見どころのあるエピソードでした♪
人為的な飛行機事故なら、パイロットかテロリストだろうと、想像つきやすいのですが。
でも今回の犯人は、個人的に飛行機をコントロールして墜落させていたんですよね!
全く予想外でした。
犯人は、オッペンハイマーに心酔し、神になりたかった勘違い君。
オッペンハイマー(1904-1967)は、第二次世界大戦中に活躍した科学者。
原子爆弾開発プロジェクトのリーダー的存在でもあり、人類初の核実験を成功させたことから、「原爆の父」と呼ばれています。
犯人がエピソード中にオッペンハイマーの言葉として引用した「我は死神なり、世界の破壊者なり」というのは、古代インドの聖典「バガヴァッド・ギーター」の一節。
オッペンハイマーがオリジナルではないんですね。
クリシュナ(ヴィシュヌ神の化身)が、戦いに積極的になり、任務を遂行するために王子アルジュナに説得したときの言葉で、オッペンハイマーは自分をクリニュナに重ねあわせていたそうです。
これだけ聞くと、オッペンハイマーは非情な科学者、というイメージがあるのですが、ウィキペディアによれば、この一節を引用し、核兵器開発したことを後悔していたということです。
そんな罪悪感からか、原子爆弾が落とされた日本の学者を、アメリカで研究できるよう便宜を図ったとも言われています。
ちなみに今回のエピソードの最初に引用された「もし千の太陽が…」というのも、「バガヴァッド・ギーター」から。
聖典ではあらゆる方角に顔を向け、千の太陽の輝きを放つすべての生存や物質を司る最高神が登場します。
聞いただけで最強ですが、犯人はこの存在に強く憧れていたようですね。
さて、この勘違いヘイマン・ヴァッシャーは、「神願望が強いシリアルキラー」と、ホッチたちにプロファイルされました(きっかけとなったのが、飛行機を遠隔操作した「レプリケーター」の件)。
自分が神になり、多くの人の生死を手玉に取りたい。
それを実行するために選んだのが、多くの人を乗せた飛行機を遠隔操作して墜落させることでした。
こんな身勝手な理由に聖典やオッペンハイマーを利用するなんて。
ホント、いい迷惑ですよね!
確かに聖書では神の都合で多くの人が救われたり、命を落としたりしていますが、ヴァッシャーはそうなりたかったんですね。
そんな神の御業を現代に持ち込んだのがオッペンハイマー、そして次は俺!
といきたかったのでしょうか…
しかしそんなヴァッシャーのミステイク。
それは、何年も前にデートした女性に「我は死神なり、世界の破壊者なり」という勘違いメールを送ったこと。
そこからヴィッシャーを発見したホッチたち。
「千の太陽」よりも、プロファイリングのほうが一枚上手でしたね~^^
墜落現場で浮かない顔をしているケイトに気がついたスペンサー。
事情を聞くと、ケイトは姉夫婦を飛行機事故で失っていことを告白しました。
一緒に住んでいるメグは、実の娘ではなく、姉の娘だったんですね。
ケイトにそんな過去があったとは。
だからでしょうか。
今回の事件を絶対に解決したい、被害者をこれ以上出したくない、というケイトの気持ちが伝わってくるようでした。
特に犯人を追い詰めたとき。
ケイトの表情には鬼気迫るものがありましたよね。
そして、事件解決後墜落現場に花を添え、メグからの着信に「早く会いたい」と言った時の安堵した表情。
辛い過去を乗り越えて、仕事に励んでいるケイトを応援したくなりました。
今回のエピソードでは実際に起きた飛行機墜落事件など、名前が多く出てきました。
2001年9月11日に起きた、アメリカ同時多発テロに巻き込まれた飛行機。
テロリスト4名を含む乗員乗客44名を乗せた93便は、ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外のシャンクスヴィルに墜落、登場していた全員が死亡。
テロリストたちは93便をワシントンDCにある、アメリカ合衆国会議事堂か、ホワイトハウスに突入させる計画があったということで結果的には失敗に終わりましたが、多くの生命が失われたことには変わりありません。
1996年7月17日にジョン・F・ケネディ国際空港を出発した
トランスワールド航空800がニューヨーク州ロングアイランドの
イースト・ハンプトン沖上空で空中分解、墜落しました。
この事故で、搭乗していた乗員乗客230名が亡くなりました。
当初テロリストによる事件との見方もあったのですが、事故調査の結果、「電気配線がショートし、その火花が傍にあった燃料タンクをつなぐ電気回線を通して
燃料タンク内に入り、気化ガスに引火したことが原因の爆発」ということがわかりました。
2014年7月17日にオランダのアムステルダム・スキポール空港から出発したマレーシア航空17便がウクライナ上空で撃墜され、同国ドネツィク州にあるグラボヴォ村に墜落、搭乗していた乗員乗客298名全員が犠牲になりました。
誰が撃墜したか特定されていませんが使用されたミサイルは、ブークミサイルというソビエト連邦時代に開発された、地対空ミサイルでした。
この事件を受けて、クリミナル・マインドのこのエピソードはオランダでは放送されず、代わりにシーズン9「少年兵士」が放送されました。
2015年2月にようやく「千の太陽」がオランダで放送されましたが、放送前には、当時の事故を想起する映像が含まれているという注意書きがオランダ語で表示されたということです。
1955年から1975年の間に、米メリーランド州エッジウッドにある兵器庫で行われていたという人体実験。
軍事研究者たちが薬物や化学物質を、動物や人間に使って極秘に進められていました。
研究は当初、冷戦状態にあったソ連の攻撃から身を守るための生物・化学的な防御手段の開発が目的でしたが、後半になると化学兵器開発の実験にまで拡大されたそうです。
人体実験には、エッジウッドに配属された当時の陸軍兵士たちが対象になりましたが、本人たちは何も知らずに注射をしたり薬を飲ませたということです。
お、恐ろしい…
これはどう見ても、人権侵害以外の何物でもありませんよね。
本来なら守るべき国民を、恐ろしい人体実験に、しかも本人に伝えずに行うとは。
現在、後遺症に苦しむ退役軍人たちが退役軍人省に対して、集団訴訟を起こしています。
もともとは全知全能の神を表す「千の太陽」ですが、「原爆の父」であるオッペンハイマーが引用したからなのか、まばゆい光が原爆とどうしても重なってしまいますよね。
後でご紹介しますが、今回のエピソードで使用された曲は、「千の太陽」というアルバムに収録されています。
このアルバムは、核兵器や戦争に対する人間の恐怖をテーマにしているんですね。
また、偶然に発見してしまったのですが、原子力開発に関する本で「千の太陽よりも明るく―原爆を造った科学者たち 」(平凡社ライブラリー)という本。
タイトルから核に関連した本とわかりますが、ここでも「千の太陽」が使われていますよね。
今回邦題も原題も「千の太陽」ですが、こうやって調べてみると、その意味がよくわかりますね。
ロッシが「ヒロシマ」といっていたのも、あ、なるほどここから来ているんですね。
そんな「つながり」を上手に使ってよく仕上げたエピソードだな、と思います(・∀・)。
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ホッチナー: "If the radiance of a thousand suns were to burst at once into the sky, that would be like the splendor of the mighty one." — From the Hindu holy book, the Bhagavad Gita
「もし千の太陽が同時に空に昇ったとしたら、その輝きはまるで全知全能の神のようになるだろう」ヒンドゥー教の聖典「バガヴァッド・ギーター」
ロッシ: "We knew the world would not be the same. Some people laughed. A few people cried. Most people were silent." — J. Robert Oppenheimer
「我々は世界がもとに戻らないことを知った。何人かは笑った。数人は泣いた。ほとんどの人は沈黙したJ.ロバート・オッペンハイマー」
リンキン・パーク「ロボット・ボーイ」(Robot Boy by Linkin Park)
この曲は、「A Thousand Suns(千の太陽)」というアルバムに収録されていますが、アルバムのタイトルは、今回引用された最初の格言にちなんでつけられました。
ロッコ・デルーカ「ウィ・コングリゲート」(We Congregate by Rocco DeLuca)