クリマイ世莉が解説!
クリミナルマインド10第21話「かぎ爪の悪魔」。
大の大人が「犯人は怪物!」と主張する、奇妙な連続殺人事件が発生!
本当に犯人は「シャドウ・モンスター」なの?!
クリマイ史上奇妙な事件の始まり、そして久々の「極悪シリアルキラー」との対決の始まりだ~><
今回のマインド勝負の行方は?!
クリミナル・マインドシーズン10第21話「かぎ爪の悪魔(Mr. Scratch)」のあらすじと感想です。
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クワンティコのBAUインタビュールーム。
ホッチナーは妻殺しの容疑者、ラリー・メリン(Larry Merrin)の取り調べをしていた。
ラリーは一貫して無実を主張、犯人は「かぎ爪のシャドウ・モンスター」がやったと言い張るのだった。
ラリーの話によると、就寝前、妻に頼まれ不審者がいないかどうかチェックするため下に降りた。
すると、セージが焦げたような香りがして気分が悪くなり、木の枝のようなカギ爪を持つ手が現れる。
妻のことが心配になって階段を登ろうとしたが、カギ爪の手に引きずり降ろされ意識を失ったという。
しかしホッチナーはこの話に同調することができなかった。
なぜなら、隣人の通報で警察官が駆けつけた時、ラリーはナイフを持って死亡している妻のそばに倒れていたからだった。
さらに、ラリーの胸には妻がつけた引っかき傷が残っている。
奇妙なことに、ラリーの前にも似たような殺人事件が発生していた。
ダニエル・カルラス(Daniel Karras)は母親を殺害し、またクリスティーン・マクニール(Christine McNeil)はボーイフレンドを殺害。
ラリー同様、どちらも「シャドウ・モンスター」に襲われたと主張、犯行の記憶が全くなかったのだ。
この経緯から、ラリーは警察ではなく、BAUで取り調べを受けているのあった。
容疑者とみられる3人は33~34歳と年齢には共通点があったが、それぞれ別の州に住んでいて、地理的には共通点はない。
人種も別で社会的経済的な関連性もなく、薬物反応も陰性だった。
モーガンとJJによって認知面接を受けたダニエルは、事件当時のことを説明し始めた。
仕事が終わって帰宅し、いつものように冷蔵庫からビールを出して飲む。
ビールの味がいつもと違うことに気がついた時、どこからかセージのような香りがして、気を失ってしまった。
気がついたらあたりはすっかり真っ暗で、キッチンテーブルに縛られて身動きが取れない。
そのときシャドウ・モンスターが現れ、自分に性的暴行を加えた。
再び気がついた時母親の隣りにいて、母親は死亡していた。
以上がダニエルの主張だが、ダニエルには性的暴行を加えられたという証拠は発見されていない。
もう一人の容疑者クリスティーンは、シャドウモンスターの話をした後黙り込んで反応しなくなったため、ケイトとホッチナーは何も聞くことができなかった。
犯人は容疑者3人を操って殺人を起こさせたのでは、と推測したホッチナーたちは、容疑者のバックグラウンドについて調べる。
やがて3人の容疑者の共通点がガルシアによって発見される。
3人共1985年に、里子に出されていたのだった。
ラリーの自宅を訪れたロッシとリード。
犯人は、容疑者たちに子供がもっとも恐れる怪物の幻覚を見せ、その恐怖心を煽って犯行に走らせたのでは、と推測する。
そして、容疑者たちが怪物が現れる前にはセージの香りがしたことを思い出し、それは幻覚を見せるためだったことに気がつく。
予想通り、家の通気口からプラスティクのチューブが見つかり、セボフルランとスコポラミンの陽性反応が出る。
どちらの薬物も強烈な乖離性のあるものだった。
臭いを嗅いだ容疑者は、いわゆる催眠状態に陥り、シャドウモンスターを見て恐怖を植え付けられる。
そして、その恐怖から逃れるために犯行に及んだというのだ。
しかしなぜ3人共同じように「かぎ爪のシャドウモンスターが現れた」というのだろうか。
3人は子供時代に同じような体験をしたのでは、と推測したホッチナーたちは、3人の里子に出される前に遡って調査を始めた。
新たな殺人事件が発生する。
死亡したのはビル・キンダーマン(Bill Kinderman)。
妻と別れ、息子と2人で暮らしていた。
ビルは自分で喉を切っており、他のケースと違っていたが、ビルも1985年養子になっていたことがわかる。
JJは、ビルには親心が残っていて、息子の代わりに自分の命を絶ったのではと推測する。
ビルの妻の話によれば、ビルは不倫を繰り返しセラピーに通っていた。
しかし高校の時担任に誘惑されたり、12歳の時に牧師からいたずらされると言った虚偽を繰り返し、しかも本人はそれはすべて本当だと主張していたというのだった。
アメリカでは、1980年代悪魔的儀式虐待が社会的な問題となり、1988年までに270ケースが報告されていた。
1985年に養子となった被害者の4人は、もしかしたらこの影響で虚偽記憶を植え付けられ、そのせいで皆同じようなシャドウモンスターを見たのではないだろうか。
ホッチナーとロッシは、沈黙を守っているクリスティーンに再びアプローチする。
ホッチナーは一計を案じセージを燃やすが、その臭いを嗅いだクリスティーンは4歳児に戻り、少しずつ口を開いていく。
しかし、あるところまで来た時、異常に怯え、「ミスター・スクラッチが来る!」と叫びながら自分の顔を執拗にかきむしり始めた。
同時に、FBI内がの電気が一斉にダウンする。
原因を調べてみると、犯人とみられる人物が故意にやったことがわかる。
犯人が使ったハッキングコードの特徴を見たリードは、犯人の特定につながる要素を発見する。
この暗号化の特徴からすると、犯人はハーバード大学の数学の超エリートコース、Math55の受講生である可能性が極めて高い。
しかも、Math55を受けた生徒たちのほとんどが、NSA(国家安全保障局)で働くというのだ。
それを知ったホッチナーは、NSAの知人にコンタクトを取るが、彼から受け取ったメモには一人の人物の名前が記されていた…
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いやあ~、久しぶりの「悪名高いシリアルキラー」キャラが登場したかな、と思わせるようなエピソードでしたね。
モンスターが現れたり犯人が巧妙なマインドコントローラーだったりと、奇妙な印象が始めから終わりまでありましたが、スペンサー役のマシュー・グレイ・ギュブラーが監督と聞くと「あ、やっぱりね」って納得してしまいます(笑)
エピソードに現れるシャドウモンスターのスケッチは、マシュー自ら描いたもので、このエピソードはホント、マシュー色の濃い作品に仕上がっていると思います。
ちなみに被害者たちが描いたシャドウモンスターは、みなマシューが描いたということですが、違いを出すように、右手で描いたり左手で描いたりしたそうですよ。
マシューって本当に多才ですね!
それから、最後はどうなることやらとドキドキしてしまいましたよね!
なんといってもホッチが犯人の毒牙にかかってピンチに陥ってしまったわけですから…
犯人はとても狡猾なヤツだったのでそれは嫌なのですが、全体的に個性的なエピソードでまとまっていたところはすごくよかったです。
終わり方が「次またあるな」という感じでしたね。
Mr.スクラッチまた出るのか(-_-;)
今回の事件の犯人は、Mr.スクラッチことピーター・ルイス。
今回で終わり、って犯人じゃないよね?!
という、余韻残しまくりで逮捕されましたが、そのとおり。
とりあえず名前は覚えておきましょう~。
この2つが事件発生の要因でしたね。
今回の被害者たちは、ピーターの父親に虐待されたと証言した子どもたち。
そして、子どもたちに虐待の事実を信じ込ませ、虚偽の証言をさせたのがレーガン博士でした。
虚偽の記憶によって父親は濡れ衣を着せられた上、囚人に殺されてしまったわけですが、だからと言ってその虚偽の記憶を利用して人を殺人者に仕立て上げるという復讐方法は、なかなか思いつきませんよね。
ここがフツーの頭脳との違いかもしれませんが。
レーガン博士はまあ自業自得だったとしても、その他の被害者たちは気の毒。
当時子供だったわけで、記憶していることを話したまでなんですからね。
チャールズ・マンソンのように、人を言いくるめて殺人をさせるというのは聞いたことありますが、「遠隔操作で殺人を実行するシリアルキラー」ってその上を行ってますよね(汗)
人を傷つけるシリアルキラーと違って、ピーターはいつの間にか頭に入り込んでくるから不気味ですよね。
目に見えない分、怖い。
これだけでもピーターのことは忘れられないシリアルキラーになりそうです。
BAUのミーティングルームのモーガン、何か違うなと思ったら、
ジャケット着てる!
とっても久しぶりに見た気が。
やっぱりモーガンは何を着ても似合いますね。素敵すぎ(*´ェ`*)ポッ
クリスティーンとのインビューを試みるホッチとケイト。
でも、クリスティーンは、名前を呼んでも反応すらしない状態でした。
そんなとき、ガルシアがホッチを呼び出します。
ホッチはケイトに向かって「後頼むな」と、部屋を出ていきますが…
全く反応してくれないクリスティーン相手にどうしろっていうの?!
と、ケイトの戸惑う様子に共感。
ケイトの立場だったら頼まれても困りますよね^^;
ビルが怖がる息子と一緒に「ブギーマン」探しをしていましたが、ブギーマンは伝説上のおばけのこと。
日本でいうと「鬼」のような存在ですね。
ブギーマンについては、過去のエピソードで紹介しています(「ブギーマンについて」)。
興味があったら読んでみてくださいね。
犯人のハッキングコードから、「犯人はハーバード大でトップレベルの数学を学んだ可能性がある」と指摘したスペンサー。
スペンサーは、「Math55という、とてつもなく難しいカリキュラムを受講したはず」と言っていましたが、この「Math55」、ハーバード大学で本当に行われているんですね~。
「Math55」は、数学部に通う大学1年生向けに実施されているコースの中で、最も難易度が高いもの(他にMath25などがある)。
Math55を受けるために生徒はテストを受けますが、ウィキペディアによると、スコア基準を満たしたのは89人中15人でした(1994年)。
名門ですから、こういうエリートコースがあってもおかしくないですが、すごい頭脳が揃ってるってどんな雰囲気なんでしょうね。
その前に、こんなコースがあるということを知ってるスペンサーにもびっくりです!
今回のエピソードで気がついたのですが、登場人物が他の小説などの要素を取り入れて出来ている部分があるところです。
「Mr.スクラッチ」という名前は、今回のエピソードのオリジナルではなくて、南北戦争前やニューイングランド時代に出来た物語によく登場する悪魔の名前から来ています。
チャールズ・ディケンズの「クリスマスキャロル」(1841)や
マーク・トウェインの「トムソーヤの冒険」(1876)にも名前が出てくるほか、その後も小説や映画にでてきています。
登場人物の姓が、あのホラー小説&映画「エクソシスト」から来ています。
役名 | クリマイでの役柄 | エクソシストでの役柄 |
---|---|---|
マクニール(McNeil) | Mr.スクラッチに操られ、ボーイフレンドを殺害(クリスティーン・マクニール) | 女優で悪霊に取りつかれたレーガンの母(クリス・マクニール) |
キンダーマン(Kinderman) | 4番目の被害者(ビル・キンダーマン) | バーク・デニングスの殺人事件を担当した警部補 |
カラス(Karras) | 1番目の被害者で、母親を殺害(ダニエル・カラス) | クリスに悪魔祓いを依頼された神父(デミアン・カラス) |
メリン(Merrin) | 3番目の被害者で、妻を殺害(ラリー・メリン) | カラス神父とともに悪魔祓いをする神父(ランカスター・メリン) |
エクソシストの役柄と、クリマイの役柄をフューチャーさせながら見ると、また違った面白さを味わえるかもしれませんね(笑)
ダニエル・カラスは、メイン州デリーに住んでいるという設定でしたが、実はこの町は架空のもので、スティーブン・キングの小に度々登場しています。
ホラー小説家として知られているスティーブン・キングの架空の街を登場させるって、ホラーつながりですね。
こういうことを知りながらエピソードを見ると、ホラー色をもっとひしひしと感じながら楽しめるかもしれません~♪
悪魔崇拝者によって子どもたちが性的・肉体的に虐待しているという告発が、1980年代のアメリカで頻発し、社会的問題に発展しました。
エピソード内で挙げられた事例
○マクマーティン…1983年のマクマーティン保育園事件のこと。保育園に通う園児の母親の主張から始まり、その後園長らは208件の児童虐待に関する訴因で告発され、裁判は6年という長期に渡りました。
○フェールズアクレス…マサチューセッツ州にあったフェールズアクレスデイケアセンターのこと。ここで働いていた教師が、園児たちに性的虐待をしていたとして1986年に有罪判決を受けました。保育園を運営していた母や姉も4人の園児に対しての虐待の罪で有罪判決を受けました。
○ケーン郡のケース…カリフォルニア州ケーン郡で、1980年代、悪魔的儀式虐待の報告が相次ぎ、60名の児童が性的被害にあったと告発、36名が裁判にかけられ有罪判決を受けました。
といっても、これらの事件は物的な証拠が乏しい上、有力な証言者が小さな子供であり、記憶が定かでなかったり、エピソードでも注目された虚偽記憶の可能性が高く、また、実際に親などから受けていた性的虐待の記憶と混同する証言も多かったことなどから、悪魔的儀式虐待は、一時的なモラル・パニックだと結論付けられています。
いわゆる、現代で言う魔女狩りですね。
実際にマクマーティン保育園事件は、裁判が長引いたものの、全員無罪となりました。
フェールズアクレスのケースは、逮捕された教師とその家族が無実を訴え続け、判決について幾度となく争われました。
母と姉は判決を覆し、1995年に釈放されました(教師本人も2004年に釈放)。
ケーン郡のケースも殆どが判決が覆され無罪になりました。
他の記憶と混同する虚偽記憶って、本当にあるんですね。
もしかしたら自分自身気づかないうちに記憶と記憶をまぜこぜにして、新しい"事実"として信じ込んでいる部分があるかもしれません~。
ホッチとピーターが対決するときは、本当にどうなるかハラハラしましたよね。
ピーターに操られまいとするホッチ。
そして、そんなホッチに感嘆するピーター。
フフ、でしょう~。
ホッチ無双なのよ!
と思いきや…
ホッチを助けに入ったBAUメンバーに向かって次々に発砲するピーター!
え、何、どうなってんの?!
眼の前で何が起きてるかわからず呆然。
これがピーターの幻覚だと知ったときは「やられた!」でしたよね。
ホッチもきっと同じだったはず。
ホッチが恐れている「仲間の死」を観せるとは。
Mr.スクラッチ、想像以上に一枚上手です。
幻覚だけど、目の前で仲間が凶弾に倒れるという生々しい体験をしたホッチ。
なんとかMr.スクラッチの支配からは逃れましたが、「俺の勝ち」と、不敵にお縄になったMr.スクラッチの言う通り、ホッチ精神的にかなりのダメージを負った様子が気になります。
でも、Mr.スクラッチの支配に屈しなかったホッチの勝ちでしょう、今回は。
これが本当のマインドゲームですね。
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ホッチナー: "Your memory is a monster; it summons with will of its own. You think you have a memory, but it has you." — John Irving
(「人の記憶はモンスター、勝手に現れる。人は記憶を持ってると思いがちだが、その反対だ」ジョン・アーヴィング)